春の光がやわらかさを取り戻し、
空気の輪郭がほどけていく頃、
会員の皆さまと共に
《春光息(しゅんこうそく)》と題した
春の香気静坐会をひらきました。
会場に選んだのは、
ホテル雅叙園東京の特別室。
静かな光が障子越しに揺れ、
春の庭の気配がそっと漂う空間です。
部屋には、ごく淡い沈香の息だけを忍ばせ、
季節の空気に寄り添うように
香りが静かに深さを変えていきます。
古伽羅は春の光と響き合い、
かすかな層をひらき、
沈香はその奥にある静けさを
そっと示してくれました。
香りに合わせて呼吸を少しゆるめると、
心の緊張がほどけ、
冬から春へ移り変わる身体の感覚が
静かに戻ってくるようでした。
最後に一服の薄茶をいただき、
春の光と香りの余韻のなかで
会を締めくくりました。
春は、光とともに心の温度が戻る季節。
この日のひとときが、
皆さまの日常に静かに息づき、
新しい春の始まりとなれば幸いです。